リーダー語録:田子みどりさん5
会社の新しい展開を模索した40代
40代に入り、会社の次のステージを考えるようになりました。業績も拡大していたので、「上場を目指そうかな?」とコンサルティング会社に入ってもらい、事業計画の作成を始めました。しかし、上場計画を作成していく内に「上場しても誰も幸せにならないのではないか」と思うようになりました。上場するためには、と今以上に売上や利益を追求していくことになります。でも、当社は女性社員が中心で、子育てなどもあり、売上を伸ばすためにガンガン働くというカラーが合いません。
唯一気がかりだったのは出資を受けていた株主のこと。報いるためには上場した方がいいと思っていました。ただ、株主の方から「そもそも応援するために出資しただけだから気にする必要はない。上場するのが自分や社員にとって本当に幸せか良く考えた方がいい」とアドバイスされました。また、コンサルタントから「ベンチャー企業の社長は年4000時間は働かないとダメ」と言われ、「そんな生き方したくない」と思い、上場を目標にするのはやめることにしました。
ただ、じっとしていられない性格で、何か新しいことをしたいとは思っていました。そのとき、世間には精神的に疲れて顔色がすぐれない人が増えてきて、街頭も荒んできていることに気づきました。「社会が経済効率を追求し過ぎた結果、疲弊している人が多くなったのかな?」「このままでは日本はヤバイ」と感じました。そこで、「癒しを求める人のための場を提供しよう」と台湾茶の喫茶店を開きました。
台湾から直輸入したお茶や、本場を模した店のインテリアの評判は良く、マスコミからの取材も相次ぎましたが、思うように売上が伸びません。お茶だけでは単価が低いので、夜はお酒もを出してみましたが、立地が悪くお客も増えません。仕方なく自分で店に行ってビールを飲んでいましたが、「これでは自分が体を壊す」と思いました。また、こちらにばかり気を取られていると本業も傾くと思い、2年でやめました。お店をたたむときは、さすがにつらく、泣きながら片づけをしていました。
ただ、その直後にリーマンショックが起こり、あのタイミングで撤退を決断して良かったと思いました。また、2年間新しいことにチャレンジしたことで、学んだことも多くありました。仕入れから決算まですべて自分で処理したので、会計知識が付いたのも収穫でしたし自分に向いていないことはやるべきではない。自分で経理を見ていたので、その知識、貿易や。BtoCビジネスの難しさも知りました。そして何より、自分に適性のないことは、やるべきではないと痛感しました。
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