リーダー語録:大森洋三さん1
4人の部署で72億円の利益を稼ぎ出す
私は大学卒業後、ヤマハに入社しました。主に海外の楽器関係の仕事をしていましたが、悶々としていた時期があります。というのも、楽器屋は日本では銀座の目抜き通りなどにあり、それなりのステータスがありますが、ニューヨークではバックストリートにしかないんです。「こんな裏道でやっているビジネスは早晩なくなる」と思い、会社に「このままの楽器ビジネスでは絶対に持たない。やるなら、世界で一番モノを売っているところに売ってもらうのがいい」と提言し、米国のウォルマートに「楽器を売らないか?」と提案に行きました。
ところが、ウォルマートは「楽器は売らないよ」とあっさり却下。「では、何なら扱ってくれるのか?」と食い下がったところ、「トイ(おもちゃ)ならOK」とのこと。世界最大手のウォルマートといえ、年がら年中モノが売れているわけではなく、クリスマスシーズンにギフトを数多く売るからこそ世界で最多の販売を誇っていたのです。本格的な楽器では高すぎてギフトにならないけど、安価なおもちゃの楽器なら売れるので、それなら扱ってもいいとのこと。
早速、帰国して生産部門のところへ行き、お願いすると、「おもちゃなんかつくれるか!」と一喝されてしまいました。仕方なく、つくってくれそうな他の工場を周っていたところ、三重の山奥にある工場まで行ったら「こんな田舎までよく来てくれたね」と言っていただき、試作品をつくってもらうことができました。そして、満を持してウォルマートで見てもらうと、「これいいね。5万台送ってもらおう」と一発で受注が決まりました。普通の楽器なら、1万台越えたらベストセラーのところ、いきなりその5倍の量。「世界で売るとはこういうことなのか!」と実感しました。
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