リーダー語録:気賀崇さん4
あるいは、部署同士のしがらみがあったりで、社内に気を遣いすぎて、具体的な製品や事業ではなく、漠然としたコンセプトを打ち出しているケースも多い。これでは何をしている会社かわかりません。当社のお客様は大企業が多いので日本でならばある程度知名度があるからまだ良いにしても、海外の潜在顧客には全く伝わらないはずです。その意味で私たちは、顧客が知りたがっていることや、その企業がその企業である所以にフォーカスするように心掛けています。そのために企業が持つコンテンツ(価値)をすべて棚卸して、それを構造化し、その企業独自の価値をデジタルで正しく表現していくように努めています。
当社はグローバルWEBサイトを構築するのがメインの仕事のため、プロジェクトの規模は自ずと大きくなります。創業から4年ほどは一本足打法で少数の大口顧客への依存度が非常に高い状況にありました。でも、あるときプロジェクトの大型化に当社の体制が追いつかず、ぽっかり穴があいてしまい苦境に立たされました。それからは売上の分散化を図るため、意識的に顧客数を増やすように努めています。BtoBやグローバルと言った当社の差別化施策には自信があったのですが、会社経営は攻め一辺倒ではなく、守りも重要であることを痛感したのがこのときでした。以来、負けがこまないようにすることも心掛けるようになりました。麻雀でもおりるポイントを見極めるのがうまい人が強いですしね。ですから、キャッシュもなるべく多く持っておくようにしています。アナリスト時代は、資本効率の観点から「キャッシュは溜め込まない方がいい」と企業に指摘していましたが、起業してからは「理論と現実は違うな」と感じています。企業規模の違いもあるでしょうけどね。
当社のスタイルは「急がば回れ」です。いろんな案件に貪欲に取り組もうとしていたある時期、辞める人が増えてしまったことがありました。そのとき「仕事の振り方が乱暴だったかな」と反省し、適度なスピードで成長していこうと決めました。Webコンサルティング・制作を手掛ける当社は、人、つまり社員が全てです。そして人にはそれぞれの成長スピードがある。それを超えたスピードを出せば、必ずひずみが出てしまいます。IT業界はドッグイヤーとも言われ、スピードも大事な要素の一つではあります。でも、当社の場合、顧客はWebサービス企業ではなく、リアルな企業ばかりです。単純に速ければいいわけでなく、顧客の特性に応じて適正な速度でお手伝いすることが長い目で見れば最善のアプローチだと考えています。
と同時に、教育については、その頃から力を入れるようになりました。プロジェクトマネジメントやWebディレクション、情報構造設計、資料作成ノウハウから、ヒアリングやファシリテーションまで、大型のプロジェクトをスムーズに進行させる当社のノウハウを、シニアメンバーが後進に伝えています。外部の教育も含めると、30人弱のこの規模の割に、教育関連投資はかなりアグレッシブだと思います。ITやコンサルティングの世界でも、引き継ぎ可能なナレッジの体系化は途上にありますが、ましてやまだ若いデジタルマーケティング支援の世界では、属人的なスキルが圧倒的な幅を利かせている。2016年には、この市場への大型参入が相次ぎ、戦略・デジタル・デザインの三位一体を謳う企業も増えてきましたが、三位を俯瞰できる人材の育成は容易ではありません。人材教育は、当社の差別化戦略を支える最重要施策として、絶対に手を抜きません。
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