リーダー語録:佐谷周吾さん2

2017.03.18 (土)

美術商見習いとしてスタートするまで、セザンヌの絵の良さを理解するには3年ほどかかりました。この間、ひたすら絵や彫刻に触れ、見る量を増やしていきました。図書館に行って飛鳥時代以降の仏像が網羅されている全集をスキャンするかのように通して見る。そんなこともしました。すると、更に3年くらいかかりましたが、アーティストや画商などプロが「これいいね」と言うものと自分がいいと思える作品が一致するようになってきました。そして、自分の説明を買い手(クライアント)が納得してくれるようにもなりました。一人前になるには、量をこなすことが大事だと改めて思います。

 

佐谷画廊で15年働いた後、独立してシュウゴアーツ(ShugoArts)を立ち上げました。私たちは、現代美術に特化したギャラリーを運営しています。美術商やギャラリーというと、どういう仕事かわかりにくいかと思いますが、簡単に分けると、例えば骨董商は制作者がとうの昔に亡くなっている作品をストックして売る仕事。現代美術のギャラリーは、生きているアーティストの作品を展示して売る仕事です。その点で我々の仕事は、作家を抱える出版社や、ミュージシャンを抱える音楽事務所の仕事に似ています。彼らも、今生きている作家や歌手を見つけて、一緒に作品づくりに取り組み売っているわけですから。彼らと我々が違う点は、作品1点当たりの単価が高く、数的なミリオンセラーを狙うわけではないこと。電子化できないことも異なる点です。こちらはモノありきの商売で、作品と作品が展示された空間が大事。これは今後も変わることはありません。

 

私は社員によく、「自分たちは2つの王国に仕えている」という話をします。一方は作り手であるアーティスト王国。もう一つは買い手であるクライアント王国。両者の間に立ち、双方のバトラーのような務めを果たさなければならないこともある。シュウゴアーツは10人強のコア・アーティストを抱えています。アーティストとして作品を売るだけで食べていける人は少ないもの。美大を出ても毎年1%残るかどうかの世界です。今売れていても、急に売れなくなることもありますので、時には彼らの人生相談にものったりします。そういう意味では、アーティストというベンチャーの目利きをしたり、サポートをする仕事とも言えるかもしれません。

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