リーダー語録:小城武彦さん2
ただ、実施した政策がなかなかうまくいきません。「なんでだろう?」と考えていたとき、「リスクもとらず、金を稼いだこともない役所の人間がベンチャー起業家の支援などできるはずがない」と自分の構造的欠陥に気付き、これはマズイと思いました。そして、「今後の人生は、産業を支える日本の人材を活かすための活動をしよう。それには、まず自分がリスクをとったり、収益を上げる経験をする必要がある」そう考え、役所を辞めてTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に転職しました。ビジネスの修行のためです。
35歳で裸一貫からのスタート。最初の仕事は社長のカバン持ちでした。初日に社長の自宅に行ったところ、「それを持って行って」と言われたのがゴルフバッグ。「まぁカバンの一種だよな」そう思って一緒にゴルフ練習場に行く。社長がボールを打つのをひたすら後ろで見ている。たまに、「どう?」と聞かれると「ナイスショット」と言う。それが初日の仕事でした。さすがに、「この転職は失敗した」と暗くなりました。ただ、その夜、「あ、社長は自分の鼻を折りにきたんだ」と気付きました。「通産官僚のエリート意識のままでいたらダメだぞ」そう伝えたかったんだと思いました。そのとき、「よし、ゼロからスタートしよう。なんでもイチから勉強してやろう」と覚悟が決まりました。この時の経験が今の自分のベースになっています。今でも社長にとても感謝しています。
入社して2年後にCCCの取締役になり、翌年、ツタヤオンラインというIT子会社を設立し社長になりました。そのとき、社長から「出資金を出しなさい」と言われました。まだ、住宅ローンも残っていてお金がない。結局、当時の自分にとっては多額の借金をして出資しましたが、そのときに「リスクをとるとはこういうことか」と初めてわかりました。同時に自分よりもはるかに大きなリスクととっているオーナー社長の凄さに気づきました。あと、CCCではリスクへの考え方も学びました。役所ではリスクを嫌いますので、リスク(懸念材料)を考えつく人が「できる奴」とみなされます。なので、私もリスクには敏感になり、ある課題に対して20個くらいのリスクはすぐ思いつくようになっていました。
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