Leaders1000 リーダーが語るの人生の軌跡

vol.018 淺場理早子さん

2015/12/21 (月)
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淺場理早子さん

株式会社C’z
代表取締役社長

パーティー用ドレスなどのレンタル事業を展開する株式会社C'z(シーズ)を創業した淺場さん。当初は個人間でドレスをシェアする方式でサービスをスタートさせましたが、店舗でドレスをレンタル方式で貸し出すモデルに転換させてから事業を拡大させることに成功しています。今回は、ご自身のキャリア、起業、MBAのことについてお聞きしました。

アルバイトの立場で本社に提案する

私は大学時代の4年間、飲食店でアルバイトをしましたが、このときの体験が仕事の原点にあります。そこでは社員1人、契約社員1人の他、アルバイト50人が働いていました。当初はバイトとして働いていましたが、契約社員の1人が辞め、私がその人の役割を担うことになりました。19歳でいきなり50人のバイトを取り仕切ることになったのです。

50人もいると、「シフトをこうしたい」「あの日を休みたい」など、みんな言いたい放題です。当時はパソコンもなく、手書きでシフトの調整をしていました。また、これだけの人数がいると派閥ができます。派閥によってテーブルに置く醤油や食器、お箸の位置もバラバラ。それをめぐって毎日のようにコンフリクトが起きます。職場の雰囲気も悪く、すぐに辞めて行く人が後を絶ちませんでした。

浅場②

「どうしてこんなにも問題が起こるのだろう?」と考えていたとき、マニュアルがないことに気付きました。問題を発見するとと解決しないと気が済まないタイプなので、バイトの立場にも関わらず、本社に対してマニュアルの導入を提案しました。パソコンがないので、手書きでルーズリーフに食器の置き場所や作業手順を書いて送りました。幸い本社に承認してもらい、店でマニュアル導入を進めていきました。

それ以降、作業の効率化が進むと共に、作業が標準化されたことで仕事をめぐる言い争いが目に見えて減りました。また、バイトの募集時に事前にシフトの要望を聞くこともしました。その結果、シフト調整がしやすくなりましたし、「要望を聞いてくれるんだ」と満足感が高まり、離職する人も減りました。

問題点を見つけたら解決策を考え、それをマニュアル化することで、作業の「効率性」と誰がやっても同じ成果をあげられる「再現性」を高める。この方法を、その後のキャリアでも応用してきました。

浅場③

恋人との別れが起業のネタになる

大学卒業後は、大手英会話学校に入社し、その後、人材会社、タイヤメーカー、SNSの会社を転々としました。業種や規模は異なりますが、一貫して採用に関する仕事をしてきました。学生時代は、正直、自分が何をしたいかがわからず、就職氷河期だったこともあり、あまり深く考えずに入りやすい会社に就職しました。

ただ、2社目で実力主義の会社で働いていたとき、周りは「営業で実績をあげて年収1000万円を達成する」と言っていましたが、私自身あまりピンと来ませんでした。「自分で年収1000万円を達成したとして、その先に何があるんだろう?それよりも自分で会社をつくって、それくらいの年収をあげられる人をたくさん出す方が面白いかな?」と思い、「自分は起業したいのかな?」と初めて起業を意識するようになりました。

当初は、人材系のキャリアが長かったので、その分野での起業を考えていましたが、「せっかく起業するなら、生涯やっていける仕事がいいし、自分でも楽しめるものがいい」と。また、「人材系は業界の常識を知り過ぎているので、違う業界の方が新しいものを生み出せるかも」と考えていました。

浅場④

起業のネタを考えていたとき、米国でカーシェアリングのビジネスが伸びていることを知りました。「これからは個人間の取引(CtoC)やシェアリングの時代が来る」と思い、身近なもので時々しか使わないシェアできそうなものを家中で探しました。最初は「ゴルフやスキーグッズもいいかな?」と思いましたが、自分ではあまりやらないので、ユーザー心理がわからない。また、コストや効率の面を考えると、かさばるものではなく、保管しやすいものの方がいいのでやめました。

他に探していたとき、タンスの中にあるパーティー用のドレスに目が留まりました。これなら、20代、30代の女性ユーザーのこともわかるし、スペースもとらない。「いけるかも?」と思いました。ただ、以前からアパレル業界は気になっていたんですが実は好きではなかったんです。というのも、以前付き合っていた彼から「デブで、ファッションがダサい」と言われ、別れるという苦い経験があったからです。それがトラウマとなって、ファッションのことが嫌いになっていました。

でも、「もう一度付き合いたいと思われるような女性になろう」という思いから、ダイエットを始めました。嵐のとき以外、毎日1時間走る。終わったら30分ストレッチ。食事制限もする。それを1年間続けたら17キロの減量に成功しました。それ以来、「着たい服が着られるのは楽しい!」とオシャレをすることが好きになりました。

街を歩いていると振り返ってくれる人が出てきたりして、「人って変われるんだ」とも思いました。そして、「ファッションは自分の原動力になる。ここまでやってれこれたし、一生続けていけそう」と思えたことから、個人間でドレスをシェアするビジネスで起業することに決め、株式会社C’z(シーズ)を設立しました。

浅場⑤

CtoCからBtoCへビジネスモデルを転換

当初は、個人が持っているドレスを集め、別の個人に貸し出す個人間取引(CtoC)をネットで行うモデルを考えていました。ただ、個人が持っているものだと、例えばタンスの匂いがドレスにつくなど保管上の問題があります。また、当時はシェアという言葉自体も知られていなかったので、なかなか理解が進まない。加えて、顧客からも「ネットだけではわからない。ドレスを試着してみたい」との要望がありました。

そこで、アパレルメーカーから服を仕入れ、試着ができる店舗を出し、そこでドレスのレンタルサービス(BtoC)を始めたところ、一気に売上が上がりました。起業して7ヶ月での転換でした。当初、赤坂でスタートしましたが、現在は銀座と新宿で「SHARELY CODE」という名でサービスを提供しています。

浅場⑥

「SHARELY CODE」の店舗では常時200点以上のドレスや、多数のパーティーアイテムを揃えています。ドレスにバッグやアクセサリーなどの小物2点をセットにしたトータルコーディネートセットの他、小物のみのセットやドレス単品でのレンタルも受け付けています。

価格は、ドレス自体の値段に関わらず、どのドレスも1万5千円(3泊4日)でお貸ししています(トータルコーディネートセット)。当初は、「高級ブランドのものに人気が集中するのかな?」と考えていましたが、実際は違いました。海外の高級ブランドは、日本人の体型に合うものが意外と少ないんです。

それよりも「自分に合うもの」が選ばれる傾向にあります。自分に合うドレスを見つけるまで何着でも試着ができます。お客様からも「いろいろな服を着られて楽しい!」とおっしゃっていただき、何度もリピートしてご利用される方が増えています。ちなみに、私はこれまでに3千人以上の接客をしてきました。今日もつけていますが、襟には千人につき1個の星をつけることにしています。星の数をドンドン増やしていきたいと思っています。

浅場⑦

グロービスMBAで経営を学び、結果人脈ができた

前職で働いていた28歳のとき、いきなり「事業部長をやってくれ」と言われ、部門全体の舵取りを任されることがありました。ただ、見る範囲があまりに広すぎて、どうしたらいいかわかりません。「数字をどう見たらいいのか?」「どこから手をつけたらいいのか?」「課題をどう見つけたらいいのか?」わかりませんでした。そこで、グロービスに行き、単科で講座を取り、経営の勉強を始めました。

その後、起業を本格的に考えるようになってからMBAコースに入りました。MBAで役に立ったことは三つあります。一つは、ケーススタディで経営課題を解決する訓練ができたこと。与えられた課題に対して、短期間で人を巻き込みながら解決策を考える。走りながら考える。それをいろいろなケースで経験できたことは今でも役に立っています。

二つ目は、ビジネスモデルのブラッシュアップができたこと。通常、ビジネスプランを作成する授業は2年目にとることが多いのですが、入学後すぐにとりました。MBAに入る前に大まかなプランを作成していましたが、起業に興味のある方々から自分では気付かない視点からのアドバイスをもらいました。

三つ目は、人脈です。起業後は、顧客もいないし、ドレスの仕入先などの取引先も全くありませんでした。そんなとき、「友達の女性にチラシを配るよ」とか「上質な仕入先を紹介するよ」と言って、多くの方がボランティアで手伝っていただきました。その結果、最初の顧客はMBA時代の友人の会社の同僚の方でしたし、信頼できる仕入先をみつけることもできました。また、MBA時代の友人でアパレル業界に詳しい人を採用しました。直接仕事に関わる人脈をつくることができたのはMBAの一番の成果かもしれません。

浅場⑧

生きた爪痕を残す

私は、仕事をする上で「目的」「効率性」「再現性」の3つのことを大切にしています。プロジェクトを進めていくとき、だんだんと目標からかけ離れたことをしたり、バラバラに動いたりすることがあります。そんなときは、「目的は何?」「そもそも何のためにやっているの?」と原点に立ち返るようにしています。

また、極力、ムダを排除するようにも努めています。ドレス業界では、ドレスの貸し出し状況などを手書きで管理しているところが多いのですが、当社では内部管理システムをつくって、システム上で管理をしています。このシステムでは、ある顧客が、例えばABCDの商品を試着して、結果Cを選んだということもわかるので、接客をする上でも効果を発揮しています。

あと、自分がいなくなっても同じフォーマットで、同じ質の仕事ができる再現性にもこだわっています。自分だけができても仕方がないので、マニュアルをつくり、社内研修を繰り返して、誰もが同じように仕事ができる体制づくりもしています。これらのことは、最初に述べたアルバイトの時の体験がベースにあります。

浅場⑨

子供の頃から新しいことが好きで、習い事を10個していたときもあります。今は仕事が楽しく、食事をしなくてもいいくらい好きでたまらないので、あまり趣味に時間をかけることがありません。ただ、乗馬の免許を取ったり、一級船舶の免許を取ったりしましたので、いつか船でいろんなところに出掛けたいと思っています。馬にしろ船にしろ会社にしろ、自分で操縦できることが好きなのだと思います。

今は、この仕事に注力していますが、将来的には教育の仕事もしてみたいです。自分としては、この世に生を受けたからには、生きていた証や爪痕を残したいと思っています。会社もその一つですが、思考や精神など無形なものも後世に残したいと思っていて、それには教育が必要と考えています。

自分がいなくても伝播していく。そのために再現性を高めていく。学校みたいなものをつくって幅広くできたらと思っています。そして、そこで学んだ生徒がドンドン起業していき、アメーバのように広がっていく。そんな教育の場をつくっていくことが将来の夢です。

浅場⑩

 

プロフィール

1977年生まれ。国際基督教大学(ICU)卒。グロービス経営大学院MBA卒。大手英会話学校、人材系ベンチャー企業での営業職を経て、タイヤメーカーの新規事業立ち上げに従事。株式会社ミクシィ/Find Job !事業部長(現:株式会社ミクシィ・リクルートメント)を経て、2009年に株式会社C’z(シーズ)を設立、代表取締役に就任。2009年、個人のクローゼットに眠っているパーティードレスを委託し、代理でレンタルしたい人に貸し出す、委託レンタルモデルから事業を開始。現在、主力事業のレンタルドレス事業など「人が変わるきっかけ」になるサービスを軸に事業展開している
会社HP
http://www.c-z.co.jp/
レンタルドレス店舗:SHARELY CODE(シェアリー・コーデ)
http://sharelycode.jp/
レンタルドレスWEBサービス:SHARELY(シェアリー)
http://sharely.jp/

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