Leaders1000 リーダーが語るの人生の軌跡

vol.011 武臣ゆみさん

2015/10/15 (木)
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武臣ゆみさん

キュアグレーズ株式会社
代表取締役社長

自分の持つ知識や技術を世の中に伝えていきたい医師をネット上に集め、患者向けに様々な情報を提供する「いいお医者さんネット」をはじめ医療業界で斬新な事業を展開されている武臣さん。多くの方との出会いやアドバイスを取り入れることでビジネスの拡大に成功されています。今回は、起業、MBA、将来のビジネス展開などについてお聞きしました。

初年度の売上は10万円

私は、MBA取得後に今の会社を起業しましたが、実は就職するつもりでした。ただ、就職活動をしているとき、どうも前職よりも年収がダウンすることがわかりました。周りから、「せっかく2年の時間と多額の授業料を費やしたのだから、年収が下がるくらいなら起業したら?」と言われて「確かに!」と合点がいき、成功しか思い浮かばず今思うと安易に起業しました。

前職が医療に関わる仕事だったこともあり、医療系で起業しようと決め、事業プランを考えました。そのとき、自分の経験から「医療に関わっていない人がいいお医者さんと出会う場がなかなかないな。それにお医者さんも自分の言葉で患者さんに向けて発信できる場も少ないな。両方がマッチするようなサイト(「いいお医者さんネット」)を作って、そこに医療機器メーカーに広告を出してもらって収入を得るモデルは十分にニーズがあって新しいのでは?」という発想が生まれ、早速ビジネスを開始しました。

武臣②

幸い医師の賛同を得ることは比較的スムーズに進みましたが、ビジネスモデルの中心となる機器メーカーとの話がまとまりません。実績も何もないベンチャー企業で、当時は会社のホームページすらない状況のなか大企業を相手にして、結構良いところまで行っても法律や業界ルールで制限がかかって契約に至らないことが続きました。結果、初年度の売上は僅か10万円。このときは、本当につらかったですね。テレビでバラエティ番組を見ていても、「笑う意味がわからない」と思ったし、友人との食事も心から楽しむことはできませんでした。

転機となったのは人との出会いです。まず、前職でお世話になった松本晃さん(現カルビー会長)。起業してすぐに相談に行ったところ、まず「バナー(8万円/月の計画)の話で相談にくるなんて」と呆れられました。ですが「「患者さん向けというのはいいね。モデル自体はいいから精査して、医療機器だけでなく製薬会社にも行きなさい。製薬は機器の10倍売上があるんだからね。」とアドバイスをいただきました。相談から戻ると松本さんから「Businessの成功のKeyは『創意・工夫・実行』です。創意と実行は割合やさしいのですが、工夫することは大変難しいことです。工夫は頭です。考えて、考えて、それを検証することです。成功を祈ります。」というメールが届いていて、本当に嬉しかったですね。励みになりました。このメールは印刷して額に入れて今でもオフィスの目立つところに飾っています。

武臣③

このときのアドバイスがきっかけとなって「患者さんに向けて正しい情報を発信したいと思っている医師が自由に情報発信をできる場に対して、製薬・機器メーカーがスポンサーとなる」という新しいビジネスモデルが完成しました。これが特に新薬発売を控えている製薬の大手メーカー数社に受け入れられ、次第にビジネスが軌道にのっていきました。

また、あるテレビ局の関係者と出会ったことで、「施術の映像を撮影し、それをeラーニングの教材として使う」という映像系のビジネスも新たに生まれました。映像でいえば、後に技術面だけでなく、患者さん向けに医療情報を伝えるために病院の待合室で流すなど別の形で発展しています。このように、いろいろな方と出会い、助言を取り入れることで会社を少しずつ大きくしていくことができました。とても一人だけの力では、ここまでは来られませんでした。

武臣④

MBAで役立ったことは人脈づくりと修論

MBAを取得してから10年ほど経ちますが、行って良かったなーと思うことは二つあります。一つは人脈です。ゼミの先生や仲間をはじめ多くの方に創業して間もない頃から無給で手伝っていただきました。これには本当に助けられました。また、創業期だけでなく、ある程度ビジネスが確立してからも、毎月土曜日にミーティングを開いて事業のアイデアについてディスカッションをさせてもらいました。ここから多くのヒントをいただきました。時にはオフィスの屋上でバーベキューをしたり、食事をともにしたりして公私に渡ってMBAの仲間とは交流を続けています。

もう一つは修士論文です。私の修論のテーマは「医師のマネジメントコントロール」でした。プロフェッショナルとしての意識が高い医師をどのようにマネジメントすれば医療経営がうまくいくのか?ということに興味があったので、このテーマを選びました。修論を作成する上では、北海道から沖縄まで27もの施設を周り、医師にインタビューをしました。今も医師にインタビューをすることが仕事の一つですが、このときの経験がとても活きています。

武臣⑤

世界に当社のサービスを広げ、救われる命を増やしたい

先程、映像を使ったeラーニングの話を少ししましたが、これからはこのビジネスを拡大させていく予定です。具体的には、「自分の技術を後輩医師に伝えたい」との想いを持つ医師の施術時の手の動きなどを撮影し、それを教材にして医療技術を広めていく取組みをしていきます(サービス名は「oben」です)。そして、その動きを日本だけでなく、世界に広げていきたいと考えています。海外の中には医療技術が遅れ、本来助かる命が失われているという悲しい現実があります。

それに対して、私たちがサービスを提供することにより、救われる命を少しでも増やしていきたいと考えています。日本中、世界中にこのサービスが広がり、多くの医師が高い医療技術を身に付ける。そして、その医師が「いいお医者さんネット」に載り、多くの患者さんを治療していく。そんなインフラができればいいなーと夢見ています。

私は海にも山にも行くことが好きです。自然の中に身を置くと落ち着くからです。カリブ海の綺麗な海を見ながらゆっくりとしたいと夢見ていますが、残念ながらまだ実現できていません。山といえば、今年は富山の立山に登りました。夜空に輝く星がとっても綺麗でした。流れ星がいくつもありましたので、夢が実現するように秘かにお祈りをしておきました。

武臣⑥

 

プロフィール

早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修了、経営管理学修士(MBA)取得。 1994年ジョンソン・エンド・ジョンソン入社。在職中、患者さんが信頼できる医師と出会い治療に前向きに取り組むようになっていく姿を数多く見るうちに、「もっと多くの患者さんと医師をつなげたい」と考えるようになる。この時の想いと大学院での研究を機に、患者が安心できる医療情報の提供を主サービスとする会社を自身で立ち上げ、現在に至る。

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